おぼろ豆腐

認知症と少子高齢化について考えた記録

(49)ガスコンロにこだわる

私と姉は母を交え、父のいない、これからの新しい生活を一緒に考えようと切り出した。
まずリハビリのための通院をどうするか。
週に何度もバスで通うようなら定期券がいい。
調べると市で高齢者割引パスを発行しているようなのでこれを購入しようということになった。

次に家事。
掃除や灯油汲みといった腰に負担がかかる作業はホームヘルパーを頼んではどうか。
他人を家に上げることになるし、本人はまだまだ若いと思っているようなのでもしかしたら拒むかと思いきや、ここは案外あっさりと承諾した。
薬の管理に関しても、勝手に飲みすぎるから、という言い方ではなく、飲んだことを忘れてしまうから、という理由にしたところ、ヘルパーさんに預かってもらうことは承諾した。

問題は食事。
これは自分で作るからいいと言う。
朝晩はご飯、昼はパン。
今までもそうしてきたのだし、一人でできる。買い物も自転車でしてくる、雨や雪の日は歩くと言う。
それでは大変だろうから、お弁当の宅配サービスも探してみようということになった。

そしてガスコンロ。
火の消し忘れが心配だから、電気コンロにしよう。
しかしこの提案は頑なに拒まれた。
電気コンロは火力が弱く調理に時間がかかる。熱も通りにくいのでそれ用に鍋も全て買い替えねばならない。何より魚が焼けなくなるのが嫌だ。
その言い分が理路整然としていて驚く。

しかし私たちも退くわけにはいかない。
年寄り扱いしてガスコンロを止めろと言っているんじゃない。一人暮しになることの心配からだ。
俺たちですら火をうっかり消し忘れることはある。そんなとき、気がついてくれる人がいるかいないかの違いだ。

ところが母はそんな失敗はしないから大丈夫だと議論は平行線を辿る。
仕方なく、ある程度時間が経つと自動で消し止められる安全装置つきのガスコンロに買い替えるということで一旦は決着した。