おぼろ豆腐

認知症と少子高齢化について考えた記録

(60)病名は「薬物依存症」

介護認定の申請には主治医の意見書と、本人の身長体重を申告せねばならない。
診察を終えると、母は隣の部屋で身体測定を行う。
これで残った私と姉は医師に母の症状を包み隠さず伝えることができる。

足のふらつき、薬を飲みすぎる他にも、こういったことが気になっている。
・億劫だと言ってお風呂に入りたがらない
・相談してから決めようと言ったのに勝手に父の車を処分するなど思いつきの行動が多い
・ガスコンロを手離さない。その拒み方が以前にはなかった程に頑固である
・常に手持ちぶさたな様子が見られ、突然黙って散歩に出る
・ゴミ出しの時間と曜日を間違える
・忘れるのは仕方ないとして、カレンダーと分別表を見比べればよいのにそれもしない
・友達と話すときは笑顔だが、それ以外のときは無表情であることが多い

それに対する医師の考えは、やはりまず睡眠導入剤の飲み過ぎを止めさせることです、とのこと。
私が気にしていた「認知症」という単語は出てはこなかった。
医師の立場からは問題は一つずつ解決していくしかないということだろう。
まず薬の用法用量を正しく守ることができて、それでもなお残る症状があれば次の手を打つ。確かにそれは正しいやり方に思える。

お友達から貰うのも止めさせてください。薬事法でも駄目なことになっているので「先生に怒られた」と言って取り上げてください。
今のお母さんに病名をつけるとするなら「薬物依存症」です。
しかしこの近辺に薬物依存の更正施設はありません。総合病院で医療保護入院という措置も取れますが、今の症状で受け入れられるとも思えないし、入院は心身機能が低下するのでお勧めしません。
現状では薬の管理はヘルパーさんにお願いするのがよさそうです。
医師の話は概ねこうであった。

薬物依存症。
これまた私の手の届かない病名が出てきてしまった。
しかし薬の副作用の怖さなら知っている。
以前飲酒後に風邪薬を飲んでしまったことがある。
いけないこととは知っていたが、大丈夫だろうとたかをくくったのである。
ところが翌朝の通勤電車の中で気分が悪くなる。二日酔いを更に悪化させたような症状だ。
戻しそうになり慌てて電車を降りる。
しばらくベンチで休んでいると、全身から冷たい汗が流れ出て、漸く立ち上がれるようになった。
しかしそれから一週間程は通常の二日酔いのような状態が続いた。
薬の用法用量は守らないととんでもないことになると、その時身をもって経験したのだ。