おぼろ豆腐

認知症と少子高齢化について考えた記録

(64)通帳カード印鑑が見つからない

約束の時間になり、父がメインバンクとして利用していた銀行へ向かった。
事前に伝えておいた名前を言うと別室に通され、おそらく私よりも若いと思われる担当者と名刺交換をする。
この日の目的は父の預金口座の相続だ。
最初に、私には予備知識がまるでないことを伝え一からの説明をお願いした。

まず法定相続人の説明について。
我が家の場合該当するのは、被相続人の配偶者およびその子であるため、母と姉と私の3名だ。
遺言書がないので相続にはこの全員分の戸籍謄本と印鑑証明書が必要になる。
更に被相続人である故人の除籍謄本と戸籍謄本も必要と教えられる。

父の口座は解約か名義変更が選べるが、いずれにしても相続先である私名義の口座が必要だ。
「当行に口座をお持ちですか?」と聞かれる。
普段使用してはいないが、昔父が私名義の口座を開き、そこに幾らか入れておいてくれたことは知っていたので、ありますと答える。
実際に調べてもらい、それは確かに存在した。
であればそこに父の預金残高を全て移すことになるので、通帳を持参してほしいとのこと。

ここで困った。
今日ここに来るまで、私と姉は家の金庫を総ざらいして通帳とカードの類いは全て把握したつもりになっていた。
しかしその中に私名義の通帳など存在しなかったのだ。
もし見つからない場合、取り合えずもう一つ口座を開設し、そこに移してもらうことはできないのか。
しかし総合口座というものは個人につき一つしか持てないのだという。
通帳が見つからない場合、再発行手続きが必要なのだそうだ。
ここの記憶は朧気だが、確か届け出印があれば再発行の手続きも楽だとのことで、家にある印鑑をありったけ持ち出してもみたのだが、照合するものは一本もなかった。

さらに父は3枚のクレジットカードを保有しており、メインバンクはそこの引き落とし先にもなっていた。
全て解約するためカードを探さねばならないが、それも2枚しか見つからない。

このように最も相続手続きが煩雑だったこのメインバンクの他にも更に3つ。父の通帳は複数の金融機関のものが存在した。
自営業をしていたため必然と増え続けたのかもしれない。
店を閉めた時点で統合はできただろうが、高齢者にとってはなかなか骨の折れる作業であろう。
こうして私は母の介護手続き、お墓の修繕に加え、口座の一本化というタスクも同時進行せねばならなかったのだ。